心に余裕を持つこと、それが良い看護につながる

看護師として医療現場に入って、早20年が過ぎました。

この20年で、インターネットが著しく発達し、ほぼすべての若年層がスマートフォンを持ち、医療用のPHSもスマートフォンに切り替わりました。紙カルテや看護記録、カーデックスでの指示簿も見かけなくなり、新人の頃と現在では、看護師を取り巻く環境が著しく変化したことを感じています。

一番大きく変わったと感じていることのひとつに、勉強法があります。

以前は、書店を何件も廻り、沢山の書籍を手にとって、参考書を購入して勉強していましたが、現在はiPadをはじめとするデジタルデバイスが発達し、SNSからも手軽に情報を得られるようになりました。沢山の書籍を買い込み、必要な部分を抽出してまとめ、自分なりのノートを多くの同僚が作っていました。今は、iPadに電子書籍をダウンロードしたり、紙の書籍もデータとして取り込み、編集や書き込みも行えます。これにより、出勤時に沢山の書籍を持っていく必要がなくなり、iPadひとつでどこでも勉強ができるようになりましたが、新人時代にこの環境があったらどれだけ良かっただろうと思います。

比して、SNSの勉強には注意が必要だと思っています。

匿名で、監修も受けずに手軽に誰でも発信できる分、誤った情報も見かけます。看護師の業務の中には、過ちひとつが患者さんの身に危険を及ぼすものもあり、また、SNSを見た患者さんが、自分に行われている治療やケアと異なると、主治医や担当看護師に疑問を投げかけたり、SNSの情報が誤っていることを伝えても、納得いただけなかったりと、実際の現場にも良くない影響を与えていると感じざるを得ません。

出所の明らかでない情報に関して、高いリテラシーを持っていないと、うまく扱えないと危惧しています。私自身、臨床のみならず公の場で講演や発信をすることがありますが、この点に関してはとても気を付けており、受講生や聴講生にも正しい情報を得て頂きたいことを強く伝えています。

また、働き方に対する意識も随分と変わりました。

以前は、始業1時間前の出勤は当たり前、残業3-4時間当たり前という風潮でしたが、現在は、ワーク・ライフ・バランスを重視して、可能な限り定時で終業するよう様々な施設で取り組んでいます。勉強会や委員会、病棟会なども、終業時間に組み込み、勤務扱いとしている施設が増えてきました。まだ、自己研鑽とされてしまう業務やケースもありますが、多くの施設では、分単位で残業申請ができると聞いています。

私が新人の頃は、仕事が遅いから残業になるという理由で、その日の責任者が認めた場合のみ、一部分を残業申請できるというシステムでした。実際の残業時間は1か月80時間を超えていたかと思いますが、そのほとんどは請求できず、退職時も残っている有給休暇を使用できませんでした。勉強会、病棟会も、休みの日でも無給の強制参加が当たり前でした。あの時代があったから今がある、そう思えるときもありますが、やはり精神的に追い詰められ、辛いことばかりだったことの方が記憶に残っています。

そんな環境でしたので、こちらに関しては、とても良い風潮だと感じています。

私達は専門職業人ではありますが、自分の心に余裕がないと、良い看護ができません。一人の人としての自分自身やを大切にすることが、よりよい看護に繋がります。ONとOFFを切り替え、よく遊び、良く学ぶ!今も昔も大事なマインドだと考えています。

時代に合わせて、自分自身も柔軟に変わっていきつつ、大事なことを見失わないように、看護に励んでいきたいと考える今日この頃です。